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NHK「すごいよ!出川さん」
に番組協力しました

2019年に放送されたメガ実験バラエティーで、
科学的に解明されていない「土砂崩れ」を検証する
実験に、地すべりの専門家として全面協力しました。
推定土砂量100トンの迫力の映像がご覧になれます。
(肩書等は当時のまま)

ゲリラ豪雨の増加に伴い土砂災害は年々被害を増しています。NHKが防災番組として企画したこの番組では、「土砂崩れ」の現地実験を行いました。過去に土砂崩れの現地実験を行った例は、国内では3例しかありません。人工斜面による研究施設は複数あるものの、「砂を運んできて人工的に形成した斜面」では本物の斜面崩壊は再現できず、現地実験が望まれます。しかし1971年の川崎市生田で実施された実験では、想定外の土砂崩れにより15名が土砂の下敷きになり死亡する不幸な事故にみまわれ、現地実験は控えられてきました。この度の実験は2003年茨城県加波山に次ぐ4度目の実験となりました。

当社の落合技術顧問(日本地すべり学会前会長、東京農大講師)は加波山の実験で指揮を執っており、今回の実験を監修しました。実験にあたっては、川崎生田の死亡事故の映像資料の発掘から始まり、1984年愛媛大学演習林での実験に参加した矢田部隆一教授に当時のノウハウを伺うなど、慎重に準備を進めました。

実験現場は、落合技術顧問がNHKと相談の上、所有者の了解を得て、千葉県富津市の、宅造途中で放置された切取斜面上部の山腹斜面に設定されました。

当社の業務部では、事前準備として測量調査を実施しました。斜面はカシやナラの広葉樹の疎林ですが、ササやツタ類が繁茂して分け入ることが困難な藪状であったことから、これらを除去して自然斜面を保持しました。この斜面に10m四方の崩壊予定地を設定し、平面・縦断等の必要となる測量を行ったほか、15地点で簡易貫入試験を実施し、表層土の固さを調べました。

実験は、大雨が降った時の崩壊の様子を再現するために、斜面に人工降雨を長時間施します。斜面下の平地に置いた水槽からポンプを使って斜面上部まで水を引き、塩ビ管に多数の穴をあけて作った放水装置(10mを3列)から斜面に散水します。下部平坦地には水路、沈砂池を敷設し、離れたところに土砂止めの土嚢を積むなど安全管理に万全を期しました。これらの作業は、富津市建設関連5団体連合会により行われました。

崩壊に至るまでの斜面の変状を把握するため、㈱オサシテクノス、大起理化工業㈱の協力を得て、落合技術顧問の指導の下、傾斜計、伸縮計、土壌水分計、間隙水圧計などを斜面内の6ポイントに設置しました。

NHKのスタッフが災害用3Dマッピングカメラ、8Kカメラ、ドローンカメラ、360度カメラ、固定カメラなど計12台を配置しました。

実験1日目(2018年12月11日)午後、斜面に時間雨量120mmで約1時間試験散水を実施しました。

実験2日目(12月12日)、前日夜半から降り出した雨(木更津29.5㎜)が続いた後、午前11時に散水を約140㎜で開始しました。状況変化を見ながら雨量強度を引き上げ、最終的に約300㎜で散水を続けていたところ、午後3時15分、散水開始から4時間15分を経たそのとき、山頂部近くに亀裂が走ったと見るやいきなり轟音とともに立木もろとも斜面が一団となって一気に崩落しました。待ち構えていた観測隊や富津市幹部、県警、消防隊など多数の地元の方々も、夕刻まで崩落がないのではと諦めかけた矢先のあっという間の出来事で、崩落の瞬間を見損ねた方も少なくありませんでした。

土砂崩壊の現地実験は見事に成功し、番組的には十分な映像を撮影できたと思われます。次の映像は、番組で使用された映像の一部です。推定土砂量100トンの崩壊の瞬間を、斜面上部、下部、上空から、崩壊部の土塊上まで、多くのカメラで多角的にとらえた迫力の映像がご覧いただけます。
(2018年12月21日プレスリリースを参考)

2019年1月19日放送